歴史から消された日本人の美徳/黄文雄


意外な「村八分」の本当の意味


 対象:道徳教育
歴史から消された日本人の美徳/黄文雄 歴史から消された日本人の美徳/黄文雄

親日国家であると言われる台湾の筆者。
本書では、身近な例を出しながら、中国人の漢文化と、日本人の和文化を比較しています。

特に、村八分の話は興味深いと思いました。日本のムラ文化である「村八分」とは、美しい文化だ、と筆者は言います。この理由を聞いて納得しました。私は、村八分の本当の意味を知りませんでした。

その他、気づいた点は下記の通りです。


・日本では「山の神様」とか「森の神様」などの言い方があり、神社やお寺は鬱蒼と茂った林や森や山の中にある、というのが一般的なイメージ。町中にある神社も、木立に囲まれていることが多く、そのあたりは以前に人々が「神が存在する」と信じていた森だったことを示している。つまり至る所にある自然に、神々が宿っていると考えていた。

・一方中国では、神は自然に宿るのではなく、天からまっすぐやってきたと考える。そのため、直接的な現世利益を薦める。そのため、寺院も自然界とは無縁で、禿げ山に建っていたり、ごみごみした町中に存在するという。確かに香港で見る寺院も、日本人からすると違和感がある。本殿があるべき場所に自販機があったり、荘厳さを感じにくい印象があった。

・またこの中国の宗教感は、商売にも通じているようだ。一般的な日本人は、お金儲けに邁進する姿を嫌う傾向があるが、中国人は寛容であるそうだ。

・中国人との比較だけではなく、世界中で日本人だけしかもっていないアイデンティティは、「和を持って尊しとする」という精神のようだ。聖徳太子が唱えたことだが、皆が共存する為に、自我(エゴ)を抑えるという精神だ。意見が対立するのは、人間同士だから当たり前であって、対立があった場合にいかに共存できる道を探るかというのが、日本人のテーマであった訳だ。

・日本では外国文化を日本のもののように「消化」するが、他国ではこのようなことをしないそうだ。例えば日本人は数有る中華料理の1メニューであるラーメンを、日本人なりに消化して、一つのジャンルとして確立した。でも海外では一般的に、新たな文化が入った場合はそのまま受け入れるか、拒否するかという選択が多いようだ(もちろん多少のアレンジはある)。日本は、言葉にしてもカタカナ・ひらがな・漢字を使い分けている。異文化を消化している証拠だ。

・困ったら助ける、収穫が多かったらおすそ分けする、必要以上の干渉はしない、相手の嫌がることはしない、変わった人や外部の人とも共存する道を探す、問題があったらまず自分達が反省する、といった基本的な日本人の行動規範は、聖徳太子の頃から変わっていないようだ。

・日本のムラ文化である「村八分」とは、美しい文化だ、と筆者は言う。この理由を聞いて納得した。村八分の本当の意味を知らなかった。当時、付き合い10分、という考え方が基本としてあったようだ。そのうちの2分を引いて、村八分と言うらしい。

・十分というのは、誕生、成人、結婚、死亡、法事、火事、水害、病気、旅立ち、普請のことだという。このうち、火事と死亡を除いた八分の付き合いを絶つ、ということだそうだ。つまり村八分にされても、火事の際は助けを出すし、葬式では香典も出す。これは生活基盤のほとんどが共同体の中にあって、追放することは死をを意味していたからだという。他の国ではもっと厳しい迫害に逢っていた可能性が高いという。

・漢文化では、来世という概念がないため、罪に対する意識が日本人やキリスト教文化圏とは異なるそうだ。日本でも悪いことをすると、誰も見ていなくても「お天道様が見ている」という意識があるが、中国ではそれが希薄だという。

・日本には茶道、華道、書道、弓道、柔道など、様々な「道」があるが、この真の意味を今まで認識していなかった。つまり、道とは精神的な鍛錬であって、茶、華、書などはあくまで手段だという。喫茶や華などの技術を磨きながら、段が進むにつれて精神的な研鑽が必要になる。高い精神性を身につけるために、それぞれの技能を学ぶという考え方だそうだ。つまり、分野は違えど行き着く先は一緒である。確かに、剣道や柔道の有段者は、段が進むとそれだで凶器であり、それをきちんと管理するための精神規範が必要になるはずだ。

・この「道」の意味を考えると、柔道の国際化について見方が少し変わる。オリンピック競技になるほど柔道は国際化しているが、欧米人をはじめ誰にでも分かりやすいように最近の柔道はポイント制が進んでいる。細かくポイントを重ねて、時間も読みながら戦術を立てているようだ。ポイント制は客観的で公平に見える。確かにスポーツとしてはこの方向が正しいのかも知れない。でも、それでは柔道ではなく「柔」競技ではないか。

・柔道と「道」を名乗るなら、精神規範を優先して然るべきだ。例えば、倒れていく相手に受け身を取らせるとか、負けた相手のことを考えて過度に喜びを見せないとか、そういったことを学ぶ場であるはず。従って、本来の柔道ならば競うべきはポイントではなく、どちらが「潔かったか」、どちらが「高潔な戦い」をしたかではないか。その意味で、日本人が直感的に良しとする「一本を取る柔道」は本来的だと思う。

・クリスチャンであった新渡戸稲造が、ベルギーの法学者に訪ねられた質問というのが有名だ。「宗教教育のない日本で、どうやって道徳教育ができるのか?」という問いだ。新渡戸稲造は、これに対して「武士道」がそれを担っていると答えた。

・昔、子供たちの間で流行った「ドラゴンクエスト・ダイの大冒険」というマンガ(アニメ)がある。新渡戸稲造の武士道の精神を、子供にも分かる形にした良書だと思う。

 

江戸時代やそれ以前を含めて、戦前の日本人が持っていた高い精神性を、現在の日本人はGDPの向上と引き換えに失ってしまったようです。でも根底に流れるものは変わりません。私たちも、Japanese Greats(ジャパニーズ・グレーツ)などの活動を通して、精神性の再起に寄与したいと思います。

 

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